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6時間のバイトを駆け抜けるように終えてクタクタ。

途中ヤバい子供が来て面白かった。レジを打っていたら横から割り込んできた、5歳くらいの子供。

「すみません」と訴えて来る彼の周りに保護者らしき人物がいないことを見た俺は、他のお客様のレジを打ちながらにこやかに答える。彼の手には飲み物と、総菜コーナーでパック詰めされて売られているゆで卵。

「この卵落としたら割れちゃったんですけど、ゆで卵だから割れても大丈夫でした。このまま食べるので大丈夫です」

彼は流ちょうではっきりとした声でそれだけ言うと、列の後ろに並びなおした。

……? 何を訴えたかったのだろうか。商品である卵を割ってしまったことに対して何か言わなくては、と思ってしまったのかな、しっかりした子だな、可愛いな。この時はまだそう思っていた。

何人かレジを打ち、いよいよその子供のレジを打つタイミングがやってきた。レジにたどり着くなり、彼は物凄い勢いで話し出した。

「これお昼ご飯で、今日はセブンじゃないから温めてすぐ飲めるスープみたいなのは無いですよね?飲み物が欲しかったけれど、でもこの前(中略)それでお金が足りなくなっちゃうけど、やっぱりさけるチーズが食べたくて、でもそうなったら卵をやめれば良かったんじゃないかと自問自答してしまって」

俺がレジを打っている間、本当に休むことなく、ラジオパーソナリティの如く話し続けている。おまけに感嘆すべきはその語彙力である。俺は未だかつて、「自問自答」という言葉を使っている5歳児を見たことが無い。俺自身も幼少期の頃は周りと比べて語彙的な発育が早かったため口達者ではあったが、ここまででは無かっただろう。にわかには信じがたい。

それどころか、俺が会計金額を伝えると、お釣りの小銭の数が最適になるように計算して支払いを行ったのである。親からのお使いで、「このお札を出せば良いからね」のようなレベルではなく、まるで自分の財布を軽くするためにはいくら出せばいくら返って来るのかを完全に理解しているような所作である。これには俺も絶句した。俺は小学校の途中まで、「1,063円の品物を買う時に5,063円出す意味が分からない、5,000円出せば足りるのに」と本気で思っており、親に呆れられていたというのに。本当に数的関係が苦手だ。

称賛の目を向けながら会計を終えて、後ろに並ぶ客のレジ打ちを始めた俺だったが、彼はまだ帰る様子が無い。俺が次の客のレジ打ちを始めても、レジの横でずっと流ちょうにしゃべり続けている。

これには困ったものである。レジも混んでいるので、彼のお話に付き合っている余裕はない。しかしこんなに聡明でまだ無垢な子どもを邪険にするわけにはいかない。俺は手では他の客のレジを打ちながら、視線は彼に向け、必死の作り笑顔をしていた。

やがて彼はさすがに忙しそうな俺の様子を察知したのか、次の客の会計が終わるころに「ありがとうございました」と深々と頭を下げ、帰宅していった。

すごい子どもだった。あそこまで聡明で物怖じしないと、逆に幼稚園や小学校で浮いていないだろうか。あれくらいの年代の子供は、自分と同い年で聡明な奴のことを敵視する傾向がある。

 

バイトが終わった後は友達と合流して池袋で飲む約束があった。その前に、西口公園で集合して、友達が見たいと言っていた野外ライブを見てきた。

「池袋リーグ」という一見するとスポーツ大会みたいな名前の企画団体が主導となって行われたイベントで、彼らはどうやら固定のメンバーを持たず、池袋の野外でその時音楽ができる人が集まってジャムセッションやライブを行う「架空のバンド」という設定の団体らしかった。

二日間通しで行われたイベントの〆らしく、最初は講演の中央に置かれた楽器で色々な人(勿論観客が勝手に上がって演奏しても良い)が入れ替わり立ち代わり即興で演奏していた。どうやら全て即興のセッションらしく、またタイミングによってはDJが音で遊んだり、トランペットなどの管楽器が入ってきたり、全員即興とは思えない完成度で非常に感動した。

公園の周りを青い電飾が彩っており、池袋という都心の一角、クリスマスの夜にこういう催しが開かれているのはとても粋だし、トランペットの音を聴きながらクリスマスが終わってめちゃくちゃ年末って感じがしてしまった。

後半は公園の一角に設けられたステージでライブが行われた。俺の友人はドラムをやっているのだが、どうやら今日のそのライブに出ているドラマーが滅茶苦茶凄い人(友人曰くドラムの神様)らしく、それをお目当てに見に来たとのこと。話を聞いてみると、なんとMCバトルのイベント「ADRENALINE」でバックDJの代わりにビートを演奏する「DA-Dee-MIX」の一員としての活動歴もあるらしく、意外な繋がりにたまげてしまった。

ライブは本格的で、皆演奏は勿論ステージングがかっこよかった。ボーカルの着ている服がすごくかっこよくて、俺は途中からボーカルばかり見てしまったが。

途中酔っ払いのおじいさんが観客に加わり、ズレたリズムで手を叩いたり、「がんばれー!!」「やんややんや!」と叫んでいるなど、かなり池袋だと思った。

音楽をやっている人はやはりカッコいい。ステージの上、自分を堂々と表現してそれが様になっている様子には嘆息ばかりである。舞台の上を自由に動き回り、圧倒的な「音楽」で魅了する。いや、音楽に限らず、人前に立って何かを発信している人は目が生き生きとしていて本当に憧れる。それは演劇だったり、お笑いだったり、インターネット上での配信であっても。いつまでも青春をやっている彼らは、眩しくて素敵だ!

終わった後友人がドラムの人に挨拶に行っていて、憧れの人と近い距離で話せるのは、こういう野外のラフめなイベントの良いところだなあと感じた。ライブ後はしばらくフリーセッションの時間が続いていたので、友人に「行ってくれば?」と声をかけたところ「俺のレベルじゃ怖すぎて無理」と一蹴された。直接彼の演奏を聴いたことは数回しか無いが、それでも滅茶苦茶上手かったと思うんだけどな。やはり素人目からでは分からないレベルの差、壁などがあるのだろう。

 

終わった後は居酒屋に行って軽い忘年会みたいなことをした。

高校からの付き合いだが、やはり東京に来て一番遊んだのは彼ではないだろうか。それは結構毎年変わらず、なんだかんだ高頻度で飯に行ったり酒を飲んだりしている。

彼の財政状況の危機や、あとはもう何を話したかあまり覚えていないがゲラゲラと笑っていた記憶がある。

狭くて安い居酒屋だったので隣の席と近く、そしてその隣の席のカップルが非常に治安が悪く、大声でセックスの話をしまくっていてヤバかった。OMMC姉貴くらい下ネタを叫んでいた。それだけなら別に良いけど、途中で明らかに家でやれよみたいな行為(みんなが読む日記なので、詳しい表現は控えます)を始めてて凄かったし気を取られた。

俺たちの2023年は、激ヤバカップルの公開前戯で終了……。

 

結構酔ったので駅で水を買おうとしたら、最近はやりの生絞りのオレンジジュースの自販機ができていて、前々から気にはなっていたので酔いにかまけて購入してしまった。1杯350円と強気な価格設定で、しかも10円玉以下の硬貨は使えなくて意味が分からなかった。

本当にオレンジがその場で絞られている様子がスケルトンで見えるし、搾りたての名に違わずめちゃくちゃ濃厚で、オレンジをそのまま齧っているかのような甘酸っぱい味わいで美味しかったのだが、冷静になるとこの量で350円は高すぎる気がしてきて、飲み終わってから後悔した。

 

そんなこんなで非常に充実した一日。久々の6時間ぶち抜き労働も何とか耐え抜き、結構頑張った!

明日はなんと、なんと、UMBを見に行きます!!非常に楽しみ過ぎて、今からワクワクですわ!

開始時間も少し遅めなのでゆっくり寝て、万全のコンディションで楽しみます。